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2022年10月から、後期高齢者医療制度において一定の所得がある方の窓口負担が2割に引き上がります。 具体的には、75歳以上で課税所得が28万円以上、かつ単身世帯で年収200万円以上、2人以上世帯で合計年収320万円以上の方が2割負担へ引き上げとなります。改正の対象となる被保険者は全体の20%ほどで約370万人。改正後3年間は配慮措置があり通院における負担増が月3,000円を超えた場合は還付されること、そもそも高額療養費制度があることなどから医療費が倍増するという話ではありませんが、高齢期の家計における負担が増える内容となっています。
今回の改正は年金収入に頼っている高齢者には厳しいものだと感じるかもしれませんが、現役世代の負担を抑えて国民皆保険を未来につないでいくために必要なものです。2022年度以降、団塊の世代が75歳以上となり始め医療費の増大が見込まれていますが、後期高齢者の医療費のうち、窓口負担を除いた部分の約4割は現役世代の負担(後期高齢者支援金)であり、制度の見直しをしなければ2022年時点で一人当たり6.7万円負担している後期高齢者支援金が2025年に8万円まで増加してしまう見込みであるとされています。
☆リンク→後期高齢者の窓口負担割合の見直しの必要性と意義
現役世代の家計に余裕があればまだよいのですが、近年給与水準は上がらず税や社会保険料負担は増え、働く人の手取り収入を圧迫しています。現状給与から税や社会保険料が控除された後の手取り収入は一般的な給与水準で約8割ほど、会社が30万円支給しているとすれば手取りは24万円程度になります。働く側の家計も厳しいですし、給与を支給する会社側においても昇給しても給与が増えた実感を社員に持ってもらいにくく悩ましい問題だと感じます。現在の人口構造や今後の動向を考えると今後税や社会保険料の負担を増やさないためには、給付面も見直していく必要があるといえるでしょう。
団塊の世代が後期高齢者になる2025年も目前である今、必要な医療を受けられなくなるような見直しは避けつつも「本当に必要な給付」について改めて考え、どうしたら医療保険制度がよい形で維持できるかもっと議論してほしいというのが個人的な思いです。
私の姉は看護師なのですが、今回の改正の話の中で「どうしたら医療費が減ると思う?」と聞いたら「病院に来ないのが一番」という答えが返ってきました。話をきくと、治療を受けるなというわけではなく、本当に医療が必要な人だけ病院にかかるようにできれば改善するのではということ。普段から健康に気を付ける、医療における正しい情報を知るなど、個人個人がヘルスリテラシーを高めることも重要そうです。そもそも医療現場は人手不足で、姉も毎日のようにオンコール(夜間も何かあった時に患者さんの対応をする当番)を持っています。対応できる人員も減っていくという側面から考えても切実な問題だなぁと。
現役世代の負担という話では、 雇用調整助成金の特例措置で雇用保険財政が厳しくなったことなどを背景に、今年の10月から雇用保険料も0.3%から0.5%に引き上がります。また、2020年はコロナによる受診控えで減少した医療費も2021年は過去最大の44兆円規模になるとの報道があり来年の健康保険料にも影響があるはず。給付してしまったあとに保険料を上げて調整をするというサイクルではなく、給付をする前に「現役世代の負担を増やしてまで行うべき給付なのか」「このままで制度は持続できるのか」などまで思いを巡らせて、本当に必要なものにだけお金を使うようにしていかないと負担を減らすのは難しいです。
☆リンク→令和4年度雇用保険料率のご案内
☆リンク→日本経済新聞「コロナで受診控えでも…医療費、2年ぶり増加昨年度、最大の44兆円規模」
日本の社会保険制度が果たしている役割はとても大きくて、社会保険が機能しているからこそ多くの人が安定したライフプランを描けるのだと、FPとしてもしみじみと感じます。だからこそ、次の世代に制度を良い形で引き継いでいくために、そして子育て世帯や非正規世帯など現役層でも生活に余裕があるとは言えない人たちのいまの手取り収入をこれ以上圧迫しないために、今回の改正を機に給付と負担のあり方について議論が進んでくれたらと願っています。
☆日経新聞の記事はこちら→「75歳、医療費2割負担の条件 世帯年収で差、軽減措置も」日本経済新聞
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